恋はするものではなく落ちるもの。
…そんなことを誰かが言っていましたよね。
奈良時代成立の「万葉集」にもこんな歌があります。
たまゆらに 昨日の夕(ゆうべ) 見しものを
今日の朝(あした)に 恋ふべきものか
(現代語訳)
昨日一晩だけ一緒に過ごしただけなのに、今朝にはもうあなたのことが好きになっています。
一晩の逢瀬で恋に落ちてしまった…。そんな
作者の戸惑いが感じられる歌です。
歌に使われている「たまゆら」という言葉。
漢字表記は「玉響」で、宝石の勾玉(まがたま)同士が揺らぎ触れ合う時に鳴る、かすかな音を指していましたが、後に転じて、
「ほんのわずかな」とか「ちょっとの間」という意味として使われるようになりました。
たまゆらの恋は情熱的で素敵ですが、朝日が上ると消えてしまうような儚さを秘めています。やはり私は、命が失われても永遠に絶えることのない「とこしえの愛」に憧れてしまいます。…意外にロマンチストなのです(笑)。