塾長ブログ

エジソンにならなくていい ~ヨシキくんの巻

「学習障害児のための学習塾」に勤めていた時のエピソードです。

ヨシキくん(仮名)は当時10歳。ADHD(注意欠陥/多動性障害)とLD(学習障害)の生徒でした。

ある日のこと。
私がヨシキくんを指導していると、お母さんが近づいて来てこう言いました。
あのエジソンもADHDだったそうですよ。ヨシキもエジソンのようになれますか?この子もエジソンみたいに好奇心が強いんですよ

私は答えます。
ヨシキくんはエジソンにはなれません

…そうですよね。そんな才能、この子に無いですよね。エジソンみたいな発想力も全然ないし…。
と、お母さん。

違います。
才能が無いのではありません。
エジソンになんてならなくて良いのです。

「学習障害があっても、世に名を馳せるような偉人がいる。だから、我が子も大丈夫だ。」
そう安心したい気持ちは大変よくわかります。

でも、どう頑張ってもヨシキくんはエジソンにはなれません。
ヨシキくんじゃなくても、誰もエジソンにはなれない。
なる必要がないのです。

お母さんの言うように、ヨシキくんにはエジソンのような発想力は無いかもしれない。
でも、その代わりにたくさんの「良いもの」を持っています。

隣の子がケシゴムを忘れた時、自分のを半分に割って差し出す…そんな優しい心と行動力があります。
問題集の中の登場人物の安否を案じる思いやりがあります。

まだまだありますよ。

萌黄色や鳥の子色などなど、「色」の名前にものすごく詳しいこと。
詩の朗読がとっても上手なこと。
コンパスでキレイな○が描けること。
「ごめんなさい」をためらうことなく言えること。
どんな学年の子でも、人見知りしないで話し掛けられること。

…お母さん、どれだけ知っていましたか?

「無い」ところを嘆くのではなく、「ある」ことをきちんと評価してあげてください。
どんな子供でも、キラリと光るものを必ず持っています。
それを見逃さずに拾い上げ、伸ばしてあげるのが、親や教育者の責務だと思うのです。

ヨシキくんはエジソンにならなくてもいい。
「ヨシキくん色」に染まった人生を、力いっぱい生きていけばいいのです。

誰かと自分の子供を比較しても何の役にも立ちません。
役に立たないどころか、子供の心を傷つけたり、変なプレッシャーを与えたりするだけです。

今、ヨシキくんは22歳。
どんな自分を生きているのでしょうか?


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