今日、通勤のために乗った地下鉄での出来事です。
妊婦になってからも、いつもはなるべく座らないようにしていた優先席。
今朝は体調が悪いのに普通席が空いておらず、やむなく優先席に腰掛けることにしました。
ある駅で高校生とおぼしき学生が私の隣へ。
座るやいなや、赤本らしき参考書を広げて問題を解き始めました。
次の駅で。
私たちの座っていた優先席の前に、杖をついたおばあさんがやって来ました。
席は空いていません。
その頃、脂汗が滲むほどお腹が痛かった私。
すぐに席を譲ろうとしましたが、貧血が怖くて立ち上がるのを躊躇しました。
そして隣の学生をチラリ…。
(おばあさんに気付いて、席を譲ってほしい)
心の中で訴えかけます。
でも、学生は一心不乱にシャープペンを動かして問題を解いています。
正面に立っているおばあさんにも、ましてや私の心の声にも全く気付いていない様子です。
ビーっと、発車のベル。
車体が大きく揺れました。
小さく、声にならない声を上げてよろめくおばあさん。
私は反射的に立ち上がり、「どうぞ座ってください」と席を譲りました。
吊革につかまりながら見るともなしに見ていると、問題を解き終わった学生は自己採点を始めました。
○、○、○…。
安堵と得意の入り混じった表情で、赤ペンで次々とマルをつけていく彼。
地下鉄から降り、のろのろと階段を上がりながら私は考えます。
私は何のために「みがく」を立ち上げたのか。
どんな人間を育て上げたいと思ったのか。
それらを改めて考え直す契機となった ささやかな出来事です。