論理的思考の方法論として、「演繹法(えんえきほう)」と「帰納法(きのうほう)」があります。
何となくわかるようでわからない、この2つの論法ですが、実は私たちも日常生活や仕事などで意識せずに使っているものなのですよ。
難しく説明すると混乱すると思いますので、具体例を挙げて要点だけ!
●演繹法
①野菜は栄養豊富な食べ物である。
②ピーマンは野菜の一種だ。
③だからピーマンは栄養豊富な食べ物なのだ。
まず、前提となる理論、ルール(①)をもとに、いくつか具体的な情報(②)を挙げて①に結び付け、結論(③)を導き出すやり方が「演繹法」です。
前提が間違えていなければ、「説得力をもって根本的な結論を出せる」というメリットがある反面、前提が間違えている(または一面的な)場合には結論も当然間違えたものになる、というデメリットがあります。
●帰納法
①ピーマンにはビタミンCが多い。
トマトにはリコピンが豊富だ。
ゴボウを食べると便秘が解消された。
玉ねぎは血液をサラサラにする効能がある。
②野菜は栄養豊富な食べ物である。
具体的な情報(①)を複数挙げて、そこから結論(②)を導き出すやり方を「帰納法」と言います。
1つずつ情報を重ねていくので「結論への信用度が増す」というメリットがある反面、導き出された結論はあくまでも「推論」の域を出ないというデメリットがあります。
…この段階で混乱せずに理解できた方は、それぞれのデメリットを具体例でご確認ください。
★演繹論法の失敗例
①東京の夏は蒸し暑くて上着は不要だ。
②東京旅行に出掛ける今は、夏である。
③東京旅行に上着は不要である。
①の前提が一面的なままで論じ進めると、③のような結論になりかねません。確かに東京の夏は蒸し暑いでしょう。でも屋内においては、頭が痛くなるほど冷房が効いている場所が多いものです。1枚羽織るものがなければ、女性は特に寒くて堪りませんよね。
★帰納論法の失敗例
①25才の純は、スリムな恵と付き合っている。
24才の孝介はスリムな亜弥と付き合っている。
28才の純はスリムな光と付き合っている。
②20代の男性はスリムな女性が好きである。
どれだけの情報データをとったかわかりませんが、②の結論はどう考えても正しいとは思えませんよね。情報の集め方に偏りや不足があったり、論じている者の主観が入ったりすると、導き出される結論も主観の強い推論で終わってしまいます。
この演繹法と帰納法に優劣はありません。どちらも組み合わせて使うと、結論はもちろん、考える過程においても正しい情報が積み重なり、より論理的なものになりますよ。
抽象概念を表す言葉は理解するのも、指導するのも難解ですよね。また機会があれば、知っているようで知らない言葉を取り上げていきたいと思います。