「草いきれ」という言葉があります。
夏の強い日差しを受けて、草むらから立ちのぼる むっとするような熱気と、植物独特の青臭さを表す言葉です。漢字では「草+熟れ(いきれ)」と書くのですが、「熟れ」は「熟る(いきる)」という動詞からきていて、この場合、「熱くなる・興奮する」という意味になります。
私は田舎育ちなので、子どもの頃はよく森で遊んでいました。真夏に草むらに入ったときの感覚を身体が記憶しています。天然の温室に入っているような蒸し暑さと、鼻腔を刺激する草の匂い。私は登山をするので今でも体感できるのですが、湿度も気温も妙に高く、草をすりつぶしたような匂いが一面に広がる感じ。これが「草いきれ」です。
植物は根から吸い上げた水分を葉の裏側にある「気孔」という穴から水蒸気として空気中に放出しています(蒸散)。気温が高くなると植物は活発にこの蒸散を行うため、草むらの周辺には大量の水蒸気が発生し、湿度が急激に上がるという訳です。また、生い茂った草むらの内部は風が通りにくく、空気の循環が遮断されます。太陽の熱で温められた地面や草、そして蒸散によって放出された大量の水蒸気が風に流されることなく留まるため、草むらの周りだけが高温多湿の状態になるという訳です。
草いきれー。どこか文学的な情緒が漂う言葉ですが、実はこのように科学的根拠のある現象なのですね。
文章での用例を挙げてみたので、皆さんもぜひ使ってみてくださいな。言葉は実際に使って初めて生きたものになりますよ。
🌱森の小道を抜けると、真夏の暑さを引き立てるような草いきれを感じた。
🌱校庭からはひっきりなしに鳴く蝉の声と、むせ返るような草いきれが立ち上っていた。